赤ちゃんの体重が増えてない!?
10年位前の話です。
赤ちゃん訪問事業という委託事業に福岡市近郊の自治体で従事していた時のことです。
(出生後4か月までに住民票のある自治体から専門職が自宅に訪問する母子保健法に基づく事業です)
里帰り出産をされた人は多くの人が1か月の健診を受けた後、自宅に戻りますのでその時期に自宅に伺って産後のママが孤立しないように支援します。
自宅に戻った方に育児情報などを説明して、赤ちゃんの成長を確認するため赤ちゃん用の体重計で計測します。
そして体重の増え方が順調かを観察します。
成長が順調な赤ちゃんは個人差は多少あるけど1か月で1キロほど体重が増えます。
その時伺った初産婦さんのお宅では、赤ちゃんがよく泣くんです、というママの訴えがありました。
実家では気にならなかったけど、自宅ではよく泣くんですと話されました。
体重計測を行うと1か月健診までは順調だった体重がその後の増え方が明らかに停滞していました。
そこで、母乳のみで育てていたママに母乳量を測定させてもらうと、その時期の赤ちゃんでは全然足りない1回量でした。
「食事は摂れていますか?」と必ず産後のママに聞きますが、そのママに聞くと、実家ではきちんと食べていたけど自宅では朝食は抜きで、そこまで食事に気を付けていないようでした。
その方が出産したクリニックは母乳育児でとても熱心でそれまで母乳だけで足りていたので、ママももちろんミルクは足したくないようでした。
赤ちゃんの体の発育には必要量が不足していることを説明しました。
母子手帳に「体重○○g 直母22g 1か月健診より1日○○g増加」「今は赤ちゃんの体の成長のためにミルクを追加し今後の体重を見ていきましょう」と記入して今後の再訪問を約束し帰りました。
ミルクを足しても体重が増えなければ何か病気が潜んでいるかもしれません。
幸いにその後は問題なく経過し、しかも、実家に一時的に帰り休養をしっかりとったことでミルクは不要となっていました。
その後の事です。
その自治体の4か月健診の問診や保健指導にも従事していた私は、健診会場で声を掛けられました。最初だれか全然わからなかったけど母子手帳を見せられてあの時のママだと気が付きました。
「おかげで母乳だけで育てられました」と笑顔で話され、見せてくれた母子手帳の2か月健診の欄には小児科の橋本武夫先生(有名な先生で、助産師学生の時に学校に授業に来てくれていた)のコメントが。
内容は詳しくは記憶してないけど、「助産師の長尾さんよくやった」、的なお褒めの言葉が書いてあり、ほんとに嬉しかったことは記憶しています。
わざわざ声をかけてくれたこと、1・2回しか会ってない助産師を覚えていてくれたこと、学生時代から素晴らしい授業をしてくれた橋本先生からお褒めのコメントをいただいていたことが自分にとっては忘れられない出来事です。
橋本武夫先生の本は今も愛読しています。
今後も産後の女性の力になれるよう微力だけど頑張ります。